文久三年創業 滝澤酒造株式会社 菊泉

蔵元杜氏の酒雑記

二日酔いについて

二日酔いの原因物質

お酒をたくさん飲んだ翌日は、気分が悪い、頭が痛いといった二日酔いを経験したことのある人は多いと思います。お酒を飲むと、アルコールは体内にあるアルコール脱水素酵素によってまずアセトアルデヒドという物質に分解されます。このアセトアルデヒドが二日酔いの原因となる物質なのですが、最終的にアセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって無害な酢酸に分解されます。

お酒に強い人と弱い人

ALDHは2種類あり、1つはアセトアルデヒドが十分に増えないと働かないタイプ(ALDH1)、もう1つは少量のアセトアルデヒドでも分解するタイプ(ALDH2)です。一般に日本人の約半数は、ALDH2をもたないか、あっても活性が弱いといわれています。一方、欧米人の多くはALDH1をもっております。ALDH1をもっているかもっていないかでお酒の強い人と弱い人が分かれます。

お酒の種類による二日酔いの差

さて、お酒を大きく分類すると、醸造酒と蒸留酒に分かれます。醸造酒と蒸留酒との違いは、製造過程で蒸留をしないかするかということです。蒸留酒は、もろみを発酵させてそれを蒸留することでアルコール分の高い液体を得ることができます。焼酎やウイスキー、ウオッカなどは蒸留酒に含まれます。一方、醸造酒はもろみを発酵させ、こします。その後、生の状態で出荷するもの以外は加熱殺菌などの工程を経ますが、蒸留はしません。日本酒やワイン、ビールなどが醸造酒です。

蒸留酒は、蒸留をすることで糖やアミノ酸などの栄養分がなくなり、アルコールのみが抽出されます。一方で、醸造酒はアルコールとともに栄養分が残っています。この栄養分がアルコールを分解する速度を遅らせるので、確かに醸造酒は蒸留酒よりも二日酔いしやすいのです。

二日酔いしにくいお酒は良いお酒?

10年以上前の話ですが、あるテレビ番組で焼酎が取り上げられました。番組では、二日酔いしにくい焼酎を善玉、二日酔いしやすい日本酒を悪玉のように紹介しておりました。

果たして、二日酔いしにくいお酒は体に良いものなのでしょうか。私は逆に二日酔いがあるから、過度の飲酒にブレーキがかかると考えます。二日酔いしにくいアルコール飲料を奨励すれば、人間の肝臓に大きな負担となるはずです。現に、秋田大学名誉教授滝澤行雄氏によると、日本酒消費量の多い地域は肝硬変患者が少なく、焼酎消費量の多い地域には肝硬変患者が多いそうです。

お酒を飲むうえで大切にしたいこと

もちろん、二日酔いしにくい焼酎やウイスキーなどの蒸留酒を否定しているのではありません。それぞれの酒にはその国や地方の歴史と文化があり、すべてのお酒を尊重すべきだと思います。問題は、飲みやすさから生じる過度のアルコール摂取です。私たち生産者は、飲みやすいから勧めるのではなく、アルコール中毒や未成年者の飲酒あるいは一気飲みという問題も含め、そこに潜む大きな危険性を消費者に知らせたうえで、お酒を楽しんでもらうことが重要ではないでしょうか。

ここで一句

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