滝澤酒造は、手造りによる伝統製法を守り続けています。昔ながらの道具を使い、蔵人の経験と勘に基づいて作業を行います。酒造りでもっとも重要とされているのは麹造りですが、麹の出来は洗米・蒸米という原料処理で決まると言っても過言ではありません。手間のかかる洗米も、吟醸酒以上ではやさしく手洗いします。蒸米は、蒸気が均等に通り安定した蒸かしが可能な昔ながらの和釜と甑で行います。その後の麹造りはもちろん、仕込み工程でも手作業にこだわります。
原料や発酵の状態を感じ取り、微調整していけるのは人。もしかしたら、現代の機械なら大差はないのかもしれません。それでも、私たちは手造りを大切にしたいと思います。
麹造りを大きく分けると、蓋麹法・箱麹法・機械麹法という3つの方法があります。私たちは、伝統的な製法のなかでも個体差を少なくできる箱麹法を採用してきました。
麹づくりは、蒸米に麹菌を振りかける「種付け」を行い、ここから温度管理が始まります。蒸米が約48時間後に一定温度になるよう、こまめに品温や麹の繁殖状態を確かめなければなりません。種付けから約24時間後に130×60cmほどの木箱に小分けし、より繊細な管理を行います。温度が上がれば混ぜたり広げたりして冷まし、温度が低ければ箱を二段三段と積み重ねる。この作業を3〜4時間置きに繰り返し、少しずつ目標温度に向けて温度を上げていくことで、適切な酵素が備わった麹が育つのです。
深谷にはかつて日本煉瓦製造株式会社の工場があり、良質な煉瓦が生産されていました。東京駅や赤坂離宮などは深谷産の煉瓦で建設されています。滝澤酒造でも、煙突や麹室、製品を貯蔵する蔵がこの煉瓦で建てられています。特に、保温性と保湿性に優れた煉瓦製の麹室は、繊細な温度管理を求められる麹造りに最適であり、菊泉の酒造りに欠くことのできない存在です。
また、荒川水系の伏流水は発酵に有利な硬水で、菊泉の目指す淡麗な口当たりに適した水質です。麹が乾燥しやすい冬の気候も、すっきりとしたお酒の製造に向いています。深谷の酒蔵として、地域の風土を活かした地酒をつくります。